D2Cブランドの定期購買サブスク基盤を内製化し、外部決済代行コストを月数百万円削減
急成長するD2Cブランドの定期購買基盤を、外部サブスク代行からStripe Subscriptions直結の自社基盤へ移行。月数百万円のコスト削減と施策実行スピードの向上を同時に実現しました。
背景と課題
D2C G社は、健康・美容系の消耗品を定期購買形式で届けるD2Cブランドです。創業から3年で月商が急成長を続け、サブスクリプション会員数も数万人規模に達していました。定期購買の決済・課金管理は、立ち上げ期から外部のサブスク代行サービスに依存していましたが、月商の伸びとともにこの構造が経営上の課題として浮上しました。
- 手数料の増大:外部サブスク代行サービスの手数料が売上比5%超に達し、月商が伸びるほど手数料負担がそのまま増加する構造になっていました。成長が続く中で、毎月数百万円単位のコストが積み上がる状況は看過できない水準でした
- 施策の自由度の欠如:解約フォームや引き止め導線のカスタマイズが代行サービス側の仕様に縛られ、解約率の改善に向けたABテストを含む自社施策が一切打てない状況でした
- 顧客データの制約:顧客データの抽出形式が代行サービスの提供範囲に限定されており、CRM・MAツールへの連携が手作業のCSV取り込みに依存していました。リアルタイムな顧客分析が困難な状態でした
- 施策投入の遅延:初月割引・スキップ・お休み機能といった新キャンペーンの実装には代行サービス側の改修対応が必要で、投入まで2週間以上のリードタイムが常態化していました
コスト構造の改善と施策の自由度確保を両立するため、自社決済基盤の構築をXECINへ相談いただいたのが本プロジェクトの出発点です。
XECINのアプローチ
外部代行サービスとの契約を解約することなく、バックエンドだけを段階的に自社基盤へ切り替えられる設計を基本方針としました。移行中に顧客体験を損なわないこと、リスクが顕在化した場合にロールバックできることを前提条件として、システム全体のアーキテクチャを検討しました。
- 現状分析と移行リスクの洗い出し:既存の決済フロー・顧客データ構造・解約フローを詳細にドキュメント化し、移行にあたって影響を受ける箇所を事前にすべて列挙した
- 二重運用フェーズの設計:新規契約から順次自社基盤へ誘導し、既存契約は更新タイミングで自動移行する構成を採用。顧客への通知不要・ゼロダウンタイムで切り替えが完了できる設計とした
- 施策実行基盤の同時整備:決済基盤の移行と並行して、解約フローのABテスト機能・キャンペーン管理機能を設計・実装し、内製化完了と同時に施策を打てる体制を整えた
実施内容
体制
XECINからはバックエンドエンジニア2名・フロントエンドエンジニア1名・プロジェクトマネージャー1名の計4名が参画しました。G社側の事業開発担当者・エンジニアと週次の同期ミーティングを継続し、施策優先度の調整と仕様確認を迅速に行いながら開発を進めました。
技術領域
Stripe Subscriptions直結の決済基盤(TypeScript × Next.js × Python)
Stripe Subscriptionsに直接接続する決済APIをTypeScript + Next.jsで構築しました。Webhookによるサブスクリプション状態管理・支払い失敗時のリトライロジック・プランの切り替えとキャンセル処理をサーバーサイドで一元管理しています。顧客向けのマイページ(プラン確認・変更・解約)もNext.jsで実装し、Stripeのカスタマーポータルを活用してPCI DSS準拠の決済UIを提供しました。
バックエンドのイベント処理はPythonで実装し、Stripe WebhookイベントをAWS Lambdaで受け取り、DB更新・通知送信・CRM連携を自動化するイベント駆動パイプラインを整備しました。
データ基盤(PostgreSQL × AWS RDS)
顧客情報・サブスクリプション状態・購買履歴をPostgreSQLで管理し、AWS RDS上に構築しました。これにより顧客データをリアルタイムで自社DBに保有できるようになり、CRM・MAツールへのAPI連携が可能になりました。代行サービスに縛られていたデータ制約が解消され、LTV分析・セグメント配信・解約予測といった高度な分析基盤への拡張が可能な構造になっています。
施策実行基盤の整備
解約フローをコンポーネント化し、引き止め導線(特典提示・スキップ提案・解約理由ヒアリング)の各ステップをAPIフラグで切り替えられる構造で設計しました。これにより、解約フローのABテストを内製エンジニアが設定・計測できる体制が整いました。また、初月割引・スキップ・お休み機能などのキャンペーンロジックをAPI経由で制御できる仕組みを実装し、施策の即日投入を実現しました。
インフラ / 移行支援
移行期間中は新規契約のみ自社基盤で受け付け、既存契約は代行サービスで継続する二重運用体制を約3ヶ月維持しました。既存顧客への通知・手続きは不要とし、更新タイミングで自動的に自社基盤へ移行する設計としたため、顧客体験への影響はゼロで移行が完了しました。
成果
- 外部代行コストが月数百万円→月数十万円台に圧縮(移管完了から3ヶ月で開発投資を回収)
- 解約フローのABテスト実施が可能になり、解約率を継続的に改善できる体制に移行
- 新キャンペーン施策の投入リードタイムを2週間→1営業日に短縮
- 顧客データを自社DBで保有することでCRM・LTV分析の高度化が可能に
「コスト削減だけを期待していましたが、施策を自分たちのタイミングで打てるようになったことが、それ以上の変化でした。解約率の改善も、今では自分たちでデータを見ながら仮説を検証できています。」(G社 事業開発部門)
継続支援
移管完了後も、Stripe APIバージョンアップへの対応・新決済手段の追加・キャンペーン機能の拡張をXECINが継続サポートしています。蓄積された顧客データをもとにしたLTV予測モデルの導入検討も進んでおり、データ活用のさらなる高度化に向けた支援を継続しています。