食品メーカーの生産管理と在庫自動発注を連携し、廃棄ロスを35%削減
賞味期限管理が厳格な食品メーカーで、生産計画システムと原材料発注システムが連携しておらず、需要予測のずれによる廃棄ロスと欠品が課題だった。過去3年分の生産・販売データを分析し、品目別の需要パターンを可視化。安全在庫水準と発注点を自動計算するロジックをAWS Lambda + DynamoDBで構築し、廃棄ロスを年間売上比3%から1.9%に削減した。
背景と課題
食品製造・加工を手がけるこの企業は、スーパーマーケットや食品卸売業者を主な取引先とし、惣菜類や冷凍食品を中心に年間数百SKUを製造しています。食品という性質上、原材料の賞味期限管理は極めて厳格であり、在庫の過不足は廃棄ロスや欠品として直接的な損失に結びつきます。
事業規模の拡大とともに、既存の業務フローに以下の課題が蓄積していました。
- 生産計画と発注の連携欠如:生産計画システムと原材料発注システムはそれぞれ独立して稼働しており、担当者が双方の画面を見比べながら発注量を判断していた。経験則に頼る属人的な運用は引き継ぎが難しく、担当者の異動のたびにノウハウが失われていた
- 廃棄ロスの高止まり:賞味期限が短い原材料では、需要予測のずれが即廃棄に直結した。廃棄ロスは年間売上の3%に達しており、製造コスト削減の最優先課題として経営層から認識されていた
- 季節需要への対応の遅れ:夏場の冷凍食品需要や年末の惣菜需要など、季節性の強い品目では発注サイクルの見直しが毎シーズン後手に回り、繁忙期の欠品が頻発した
- 棚卸しの負担:原材料倉庫の在庫量をリアルタイムで把握する手段がなく、毎月2日間の棚卸し作業に倉庫担当者の工数を費やしていた
「廃棄が出るのはわかっているが、どこで何が余っているのかすら正確に見えていない」という状況から、データに基づく在庫管理の仕組みへの刷新を検討し、XECINへご相談をいただきました。
XECINのアプローチ
まず過去3年間の生産実績データ・販売データを分析し、品目カテゴリごとの需要パターンを可視化することから始めました。ヒアリングを通じて廃棄が集中する品目と季節帯を特定し、システム側に組み込む発注ロジックの設計に落とし込みました。
- データ分析:3年分の生産・販売・廃棄データを集計し、品目別の需要変動係数・廃棄傾向・欠品頻度を可視化
- ロジック設計:安全在庫水準と発注点をカテゴリごとに自動計算するアルゴリズムを設計。季節係数を取り込んだ予測モデルを組み合わせ、繁忙期の発注精度を向上
- 段階的実装:廃棄影響が大きい主要原材料カテゴリ(生鮮・冷凍)から優先的に自動化し、稼働確認後に全カテゴリへ展開
実施内容
体制
- XECINからプロジェクトマネージャー1名、バックエンドエンジニア2名、フロントエンドエンジニア1名を担当
- クライアント側の生産管理担当・発注担当と週次定例で要件を擦り合わせながら開発を進めた
技術領域
自動発注ロジックの構築
生産計画システムからのデータをもとに、原材料ごとの発注点到達を検知して自動で発注候補を生成するロジックをAWS Lambda上に実装しました。発注候補はReact製の管理画面に通知として表示され、担当者が最終確認してワンクリックで発注確定できる運用に切り替えました。
- バックエンド:Python(Lambda)によるイベント駆動処理。生産計画データの変更を検知するたびに在庫水準と発注点を再計算
- データストア:DynamoDBで原材料ごとの在庫水準・安全在庫・発注点・季節係数を管理。高頻度な読み書きに対応
- API連携:既存の生産計画システムとREST APIで接続し、計画データをリアルタイムで取得する連携レイヤーを設計
在庫可視化ダッシュボード
倉庫内の原材料在庫をリアルタイムで可視化するReact製ダッシュボードを構築しました。品目別の在庫水準・発注状況・賞味期限別の在庫量をグラフで一覧表示し、廃棄リスクが高い在庫を警告色でハイライトします。
- フロントエンド:React + TypeScriptによるSPA構成
- 賞味期限別アラート機能により、廃棄予備軍の在庫を担当者が事前に把握できる仕組みを実装
需要予測モデルの組み込み
過去3年の販売実績をもとに、品目カテゴリ別の季節係数と需要変動係数をPythonで算出。発注点計算ロジックに組み込み、繁忙期・閑散期で動的に安全在庫水準が調整されるようにしました。
インフラ
- AWS Lambda + EventBridgeによるサーバーレス構成で運用コストを最小化
- CloudWatch Alarmsによる在庫異常・API連携エラーの監視とSlack通知を設定
成果
自動発注ロジックの稼働開始から3か月で、廃棄ロス・欠品ともに目標値を達成しました。
- 廃棄ロス:年間売上比3%→1.9%に削減(約35%改善)
- 繁忙期の欠品発生件数:月平均8件→2件に削減
- 原材料の棚卸し工数:月2日→半日以内に短縮(ダッシュボードによるリアルタイム把握で棚卸し頻度も削減)
- 発注担当者の判断業務:月約30時間削減し、品質管理業務へ人員を再配置
「どの原材料がいくつあって、いつ頼めばいいかが画面で一目でわかるようになった。判断に迷う時間がなくなって、本来やるべき仕事に集中できている」とご担当者からご評価をいただきました。
継続支援
現在は稼働後の予測精度モニタリングと、季節係数の定期見直しサポートを継続しています。新商品投入時の原材料追加対応や、仕入れ先別リードタイムを加味した発注タイミング最適化など、次フェーズの機能拡張に向けた要件整理も進めています。