クリニックチェーンの予約・電子カルテ連携基盤を構築し、患者待ち時間を45%短縮
複数拠点を展開するクリニックチェーンで、予約システムと電子カルテが未連携のまま運用され、患者情報の二重入力や予約枠の非効率な管理が常態化していた。Java(Spring Boot)ベースのAPI連携基盤を新設し、両システムの統合と拠点横断の予約最適化を実現した。
背景と課題
首都圏を中心に内科・皮膚科・眼科など複数の診療科を展開するクリニックチェーンC社は、各拠点で統一ブランドのもと診療を行い、地域密着型の医療サービスを提供しています。拠点数の増加に伴い患者の利便性向上を目指して各院共通のWeb予約システムを導入していましたが、診療記録を管理する電子カルテとは別ベンダーの製品を使用しており、両システム間のデータ連携に深刻な課題を抱えていました。
- 予約システムと電子カルテの断絶:予約システムと電子カルテがそれぞれ独立したベンダー製品で構築されており、データの受け渡しが手作業に依存していました。予約時に入力された患者情報が診察時に自動反映されず、受付で改めて手入力する運用が日常的に発生していました
- 二重入力による受付業務の負荷:患者の基本情報(氏名・生年月日・保険証情報等)を予約時と来院時の両方で入力する必要があり、受付スタッフの業務負荷が慢性的に高い状態でした。入力ミスによるカルテ紐づけエラーも散発し、確認作業がさらに工数を圧迫していました
- 拠点間の予約状況が共有されない:各拠点の予約状況がリアルタイムで共有されておらず、患者が特定の人気拠点に集中する一方、近隣の別拠点には空き枠があるという偏りが恒常的に発生していました
- 予約変更・キャンセルの反映遅延:患者が電話やWebで予約変更・キャンセルを行っても、システム間の反映にタイムラグがあり、空いているはずの枠に新規予約を受け付けられないケースが頻発していました
「このまま拠点を増やしても、受付業務が破綻するだけ」という経営層の危機感から、XECINへ予約・カルテ連携基盤の構築をご相談いただきました。
XECINのアプローチ
まず既存の電子カルテベンダーが提供するAPI仕様を詳細に調査し、外部連携で実現可能な範囲と制約を正確に把握することから着手しました。予約システム側にAPI Gateway層を新設し、電子カルテとの双方向データ連携を実現する方針を策定しました。
- 現状分析:全拠点の受付フローを実地調査し、手作業による二重入力が発生しているポイントと、その件数・所要時間を定量的に計測
- 連携設計:電子カルテベンダーの公開APIの仕様・制限を精査し、患者基本情報・予約ステータス・来院履歴の連携に必要なインターフェースを設計
- 段階移行戦略:全拠点一斉移行のリスクを回避するため、まず2拠点でパイロット導入し、運用上の課題をフィードバックしたうえで残拠点へ順次展開する計画を策定
実施内容
体制
- XECINからプロジェクトマネージャー1名、バックエンドエンジニア2名、フロントエンドエンジニア1名を配置
- クライアント側の情報システム担当者および各拠点の受付リーダーと隔週の定例ミーティングを実施し、現場の声を開発へ反映
技術領域
予約・カルテ連携API基盤の構築
予約システムと電子カルテの間にAPI Gateway層を新設し、患者情報の双方向同期を実現しました。予約確定時に患者基本情報が電子カルテへ自動連携され、来院時の二重入力を解消します。
- Java(Spring Boot)によるREST API基盤を設計・実装
- 電子カルテベンダーAPIとの認証・通信処理をラップするアダプタ層を構築
- 予約登録・変更・キャンセルのイベントをリアルタイムで電子カルテ側へ反映するWebhook連携を実装
拠点横断予約管理ダッシュボード
全拠点の予約状況をリアルタイムで一覧表示するダッシュボードを構築しました。受付スタッフが空き状況を即座に確認でき、患者への拠点案内が容易になります。
- フロントエンド:React + TypeScript
- 拠点・診療科・時間帯ごとの空き状況をリアルタイムで可視化
- 予約変更・キャンセル時の枠開放を即時反映する仕組みを実装
予約枠の自動最適配分
拠点ごとの過去の予約実績データをもとに、曜日・時間帯別の需要パターンを分析。混雑が予測される時間帯に近隣拠点への誘導を自動で行う仕組みを導入しました。
- AWS Lambdaによる需要予測バッチの定期実行
- PostgreSQL(RDS)で予約履歴・拠点マスタ・枠配分データを一元管理
インフラ
- AWS上にAPI基盤を構築し、ECS(Fargate)でコンテナ運用
- 拠点追加時もインフラ変更なしでスケール可能な設計
- CloudWatchによるAPIレスポンス監視とアラート設定
成果
パイロット2拠点での検証を経て全拠点への展開が完了し、受付業務と患者体験の両面で改善が得られました。
- 患者の平均待ち時間を45%短縮(32分→18分)。予約情報の事前連携により受付処理が高速化した
- 受付スタッフの患者情報入力工数を月60時間削減。二重入力の解消により、その時間を患者対応へ充当できるようになった
- 予約枠の稼働率が68%→85%に向上。キャンセル・変更の即時反映と拠点横断の可視化により空き枠の有効活用が実現した
- 拠点間の患者分散が改善され、混雑拠点の待ち時間ばらつきが大幅に縮小。近隣拠点への案内がデータに基づいて行えるようになった
「受付スタッフが入力作業から解放され、患者さんとのコミュニケーションに集中できるようになった」と事務長から評価をいただきました。
継続支援
現在は新規拠点の開設に伴うシステム展開支援を継続しています。今後は患者向けスマートフォンアプリとの連携や、診療科別の予約枠最適化ロジックの精緻化に向けた開発を進める予定です。