実績一覧
訪問看護ステーションの訪問スケジュール×記録基盤を統合し、看護師1人あたりの訪問件数を月20件増加
訪問看護ステーションの訪問スケジュール×記録基盤を統合し、看護師1人あたりの訪問件数を月20件増加
医療
Medical

訪問看護ステーションの訪問スケジュール×記録基盤を統合し、看護師1人あたりの訪問件数を月20件増加

複数拠点を展開する訪問看護ステーションで、訪問スケジュールのホワイトボード管理と帰所後のPC記録入力が移動ロスと事務残業の温床となっていた。看護師の動線に合わせたFlutterモバイルアプリをAWS Amplify・DynamoDB・Amazon Transcribeと組み合わせて構築し、現場完結型の業務基盤を実現。看護師1人あたりの月間訪問件数を約20件増加させ、事務残業をほぼゼロにした。

Client
訪問看護 I社
Industry
Medical
Period
2026
Tech
医療 / 訪問看護

背景と課題

複数拠点を展開する訪問看護ステーション I社は、在宅療養を必要とする高齢者・障害者を対象に、地域密着型の訪問看護サービスを提供しています。スタッフ数の増加とともに拠点数も拡大してきましたが、業務管理の仕組みはほぼ創業当初のままで、現場の非効率が積み重なっていました。

主な課題は以下の通りです。

  • スケジュール管理の属人化: 訪問スケジュールは拠点ごとのホワイトボードで管理しており、急な訪問先変更や緊急対応が発生した場合、電話で看護師1人ずつに連絡する必要がありました。情報伝達の漏れや認識齟齬が生じやすく、後続の訪問先への遅延がたびたび利用者とそのご家族からのクレームにつながっていました。
  • 帰所後の記録入力による残業: 訪問中に取得したバイタルや観察内容は、帰所後にPC端末で入力する運用が定着していました。看護師1人あたり毎日約2時間の事務残業が発生しており、身体的・精神的な疲弊から離職を検討するスタッフも出始めていました。
  • 急変対応時の経路混乱: 訪問中に利用者の容体悪化が判明した場合、訪問経路の組み替えや他の看護師への再配分を電話ベースで行う必要があり、調整に平均30分近くを要していました。その間、後続の利用者への訪問が遅れる事態が頻発していました。
  • 月末の請求業務集中: 看護記録の電子化が進んでいないため、月末の診療報酬請求に必要なデータの集計・確認作業が事務スタッフに一時的に集中し、請求ミスや繁忙期の残業増加を招いていました。

業務量の増加に対して離職者が出始め、「このままでは採用しても定着しない」という危機感からXECINへの相談に至りました。

XECINのアプローチ

課題の根本にあったのは、「現場と管理の情報断絶」でした。訪問中に得た情報が帰所後にしか共有されず、管理者がリアルタイムで現況を把握できないまま運用の穴が広がっていたのです。

XECINでは以下のアプローチで解決に取り組みました。

  • 現場動線の徹底的な可視化: 看護師・管理者・事務スタッフへの実地ヒアリングを通じ、1日の業務フローと情報の流れを詳細にマッピングしました。
  • モバイルファースト設計: 訪問先での操作が前提のため、片手操作・グローブ着用時の誤タップ防止・オフライン対応を設計段階から組み込みました。
  • 段階的な移行計画: 既存のホワイトボード運用と並行して新システムを試験導入し、現場スタッフが慣れるまでの移行期間を3ヶ月と設定して安全に切り替えました。

実施内容

体制

XECINからはPMを含む4名体制(PM×1、Flutterエンジニア×2、バックエンドエンジニア×1)でプロジェクトに参画しました。クライアント側は看護ステーション長・事務長・現場リーダー看護師の3名が窓口となり、週次レビューで進捗確認と現場フィードバックを継続的に反映しました。

技術領域

Flutterモバイルアプリ(看護師向け)

訪問先案内・看護記録入力・写真添付・スケジュール確認の4機能を1アプリに統合したFlutterアプリを開発しました。記録入力にはAmazon Transcribeを活用した音声入力機能を採用し、手袋を着用した状態でもバイタルや所見を音声で入力できるようにしました。オフライン時はローカルキャッシュに保存し、電波回復後に自動同期する設計としています。

リアルタイムスケジュール管理(AWS Amplify + DynamoDB)

管理者がダッシュボードで行ったスケジュール変更は、AWS Amplifyのリアルタイム通知機能を通じて担当看護師のアプリに即時プッシュ通知されます。変更の種別(訪問先変更・追加・キャンセル)と優先度をビジュアルで区別し、看護師が次の行動を瞬時に判断できる表示設計にしました。緊急対応が発生した際も、管理者が画面上で経路を組み替えるだけで関係するすべての看護師に変更が届く仕組みです。

バックエンドとデータ集計(AWS Lambda + Python)

看護記録はDynamoDBに日次で蓄積され、月末の請求処理に必要な集計をAWS LambdaのバッチジョブでCSVエクスポートする機能を実装しました。診療報酬のコード体系に合わせた集計ロジックをPythonで記述し、事務スタッフが手作業で行っていた転記・計算を自動化しました。

インフラ支援

AWS Amplifyをバックエンドの統合基盤とし、認証(Amazon Cognito)・API(AppSync GraphQL)・ストレージ(S3)を一元管理するアーキテクチャとしました。S3に保存された看護記録の写真は、CloudFrontを経由して管理画面から参照でき、クライアントや医療機関からエビデンスの確認依頼があった際もすぐに対応できます。

成果

システムの本番運用開始から3ヶ月で、以下の定量的な成果が確認されました。

  • 月平均約20件の訪問件数増加: 移動ロスの削減と記録時間の短縮により、看護師1人あたりの月間訪問件数が平均約20件増加しました。採用を増やさずにサービス提供量を拡大できたことで、収益性も改善しています。
  • 事務残業がほぼゼロに: 帰所後の記録入力に費やしていた1日約2時間の残業がほぼ解消しました。残業削減の効果が定着し、離職検討者の引き留めにもつながっています。
  • 急変対応の調整時間を約30分→3分に短縮: スケジュール変更がリアルタイムに反映されるようになり、緊急時の経路調整にかかる平均時間が大幅に短縮しました。後続訪問の遅延クレームも著しく減少しています。
  • 請求業務が月末集中から月中分散へ: 看護記録の日次蓄積と集計自動化により、月末に集中していた請求処理工数が月中に分散しました。事務スタッフの繁忙が平準化され、請求ミスも大幅に削減されました。

「現場で完結できるようになって、記録のために事務所に急いで戻る必要がなくなりました。看護に集中できる時間が確実に増えました」(担当看護師)

継続支援

本プロジェクトを振り返ると、多大な現場の協力を得ることができ、「オンライン顧客」という概念が幻想でないことを実感できた案件でした。発生する課題も小さなうちに一緒に対応できたのは、訪問介護業界ならではなのか、I社ならではなのか、現場全体の強いチームワークがあってこそです。その結束の強さが、プロジェクト全体を通じて強く印象に残っています。

現在は月次の運用振り返りとシステムのパフォーマンス改善を継続しています。音声認識の精度向上や、新たな加算区分への対応など、診療報酬改定に合わせた機能追加も随時対応中です。拠点数のさらなる拡大に向けて、スケーラビリティを確保しながら機能を段階的に拡充しています。